ビジネスプロセス・マネジメントとはA008

業務プロセス(ビジネスプロセス)については、前回のブログで紹介しました。

企業の仕事はすべてプロセスから成り立っています。企業の収益を向上させるためには、その業務プロセスが「効率的」あるいは「無駄なく」「遅滞なく」行われる必要があります。多くの企業でそのための努力として「カイゼン」活動やや「QCサークル活動」などいろいろな業務改善活動が実施されていると思います。しかし、ともするとこうした活動が部門単位でバラバラに行われ全社的広がりの中で行われていることが少ないことも事実です。こうした限られた部門の範囲内で行われる改善活動の結果は「部分最適」の追求と言われます。

上記に対してビジネスプロセス・マネジメントとは全社の業務(ビジネス)プロセス(以下、ビジネスプロセスに統一します)を高い視点から俯瞰し、科学的手法を使って各部門のプロセスが相互に矛盾のない効率的なものにレベルアップして行く活動を言います。この活動を「全体最適」の追求と呼びます。

 

ビジネスプロセス・マネジメントは業務プロセスを「見える化」するところから始まります。読者の中には内部監査(JSOX法対応)やISO認定対応のためにビジネスプロセス・モデル(モデルとは「図」のことです。)を描いた経験をお持ちの方もおられるでしょう。

 

具体的には下記の2つの画像のように、単一組織における一つの連続するプロセスを描くフローチャートと、複数の組織やシステムをまたがって表示するスイムレーンチャート等を使用します。(ケースにより、他のモデルがふさわしいときは別の形式で描くこともあります。)

このビジネスプロセス・モデルを作成するときには、以前のブログに書いたプロセス階層レベルを意識して「粒度」を揃えます。

 

 

 

「ビジネスモデルは描いたけど、いまは仕舞い込んでホコリをかぶっているよ。」とおっしゃる方も多いかと思います。確かに、モデルを描いても平素の仕事の進め方は各人が記憶していて、いちいちモデルを開くことはないかも知れません。しかし、大事なことはカイゼンやQC活動などでプロセス改善を検討するときに参加者がモデルをベースにプロセス変更を話し合う、つまり、モデルを共通の言葉として使うことです。

 

同じ部門の人でも、他人の業務には詳しくない場合もあるでしょうし、相手が新人で業務知識が乏しい場合もあるかもしれません。また、特に部門をまたいでの変更が必要な時、それぞれの部門はお互いに自分の部署の業務しか分かりません。こんな場合でも、モデルを見ながら打合せを行えば、お互いに相手の部署でどのようなプロセスの変更がどのような理由で行われるのか、あるいはお互いにどんな影響が出るのかなどのテーマについて、モデルをベースに検討すれば認識のズレが起こる可能性が大きく減少します。つまり、コミュニケーションの質が大幅に向上しますし、外部(例えば、ITベンダー等)に説明するときにも有効なツールとなります。

 

しかし(私も経験がありますが)、何かの企画でモデルを「描かされて」も、そのモデルが当該企画部門のキャビネットに眠ってしまい、上に述べた目的で使われないことが多いも事実です。従って、ビジネスプロセス・マネジメントは「経営者」が旗を振って全社活動として位置づけることが重要です。私はビジネスプロセス・マネジメントを「全社プロセス最適化活動」と呼んでいます。

 

 

 

ビジネスプロセス・マネジメントが機能しない場合の大きな弊害の一つが「サイロ化」です。

サイロとは大量の穀物などを保管する巨大な筒状の建物のことです。サイロ化とは、サイロは一つひとつが独立していることから、ヒト、モノ、コト、情報等が交流、交換、共有できない状態を指します。

官庁の縦割り組織による非効率性がその代表例ですが、サイロ化は組織にコミュニケーションの欠落による「非効率性」と、場合によっては「対立」を引き起こします。組織とは本来「最小のコスト」「最大の効率性」そして「最大の成果」「顧客満足度」を追求するものですが、サイロ化はその大きな阻害要因になります。従って、ビジネスプロセス・マネジメントを全社展開することにより、下図のようなメリットが得られます。

 

項目

内容

社内プロセス標準化

プロセスの見える化を通じ、プロセスの標準化行うことで、組織の効率性を向上する。

業務間連携の強化

業務間の連携・依存関係を把握することで、サイロ化を防ぎ、部門間連携を強化する。

環境変化への対応

プロセスを見える化・共有化することにより、社内外の環境変化への即応力を向上する。

保有資源の最適化

必要な人的スキル・設備・IT等の保有資源の配分を最適化できる。

ノウハウの属人化の排除

業務ノウハウや業務プロセスを見える化することで、属人化したノウハウの形式知化を行うことでスキルの共有化が出来る。

リスク管理の強化

見える化された業務プロセスを監視することによりリスク管理の水準を向上させる。

全体最適化

プロセス指向の改善アプローチにより、部門をまたがる課題への対策が可能となり、企業の全体最適化に寄与