システム開発のための要件定義を行うことが想定される場合、仕事を進める上での何らかの課題や問題が発生していると想定されます。そのような場合、問題の原因や、課題の解決策などを社内で論議しなければなりません。今回はそうした議論をするために有効なブレインストーミングと親和図法(KJ法)について考えてみたいと思います。
ブレインストーミング(通称、ブレスト)は、英語のBrain Stormingのことで、グループメンバーが集まり、お互いに脳を(嵐のように)活発に活動させながら自由な発想で数多くのアイデアを生み出そうとする会議の手法です。
ブレストは、アイデア出しや問題解決の討論会そして、今までになかった新しい取り組みを考える時や、何かすでに問題があり、その解決策を探す時などに向いています。
例えば「最近、急に顧客クレームが増えた」と言う事態に陥ったとします。その原因を追究しないといけない訳ですが、担当者が一人で原因を考えようとしても個人の考えにはおのずから限界があります。そこで、関連するいくつかの部署から関係者が集まり「ブレスト」をして解決のための手がかりを探そう・・・と言う「会議」が開かれるのです。
参加する人数は4~6人程度が適当だと言われています。それ以下ではアイデアの広がりが足りず、それ以上だと一人一人の発言回数が減りアイデアが散発的になるとともに、最後に意見の集約をするのが難しくなるからです。
また、バックグランドが同じ(または近い)メンバーは2人までとし、出来るだけバックグランドが異なるメンバーを集めます。そうすることにより、発想の幅が広がり会議の質が向上します。
ブレストには一般的に4つのルールがあると言われています。
1.
質より量を重視
ブレストは、手がかりを探り出す場なのでアイデアの数が重要です。
2.
どんな意見でも批判・否定はしない
どんなアイデアに手がかりが隠れているか分からないので、批判や否定は禁物です。
3.
アイデアを連想、結合し便乗する
人間は、一つのアイデアを聞いたときに「連想」「思い出し」をします。他人のアイデアをもとにして新しいアイデアを出すことを歓迎しましょう。
4.
時間を厳守する
ブレストも最後は議論の成果をまとめる必要があります。従って、時間の制限がないとダラダラとした会議になってしまします。もし、成果をまとめる段階に至らなかった場合には、別の機会を用意しましょう。
ブレストで大事な役目を果たすのが「ファシリテーター」(司会進行役)です。
ファシリテーターは・・・
1. まず、議題、ブレストの目的を明確にします。
2. ブレストが始まったら、発言者が偏らないように上手に参加者を促します。
3. 意見の衝突などが発生した場合には、ルールに立ち返ってその場を収めます。
4. 議論が目的からそれていった場合には、それとなく本道に戻します。
5. 会議の時間経過に気を配り、最後に意見をまとめるステップにメンバーを導きます。
6. 後で述べる「親和図法」による「まとめ」をリードします。
ブレストの上手な進め方に「宿題」があります。それは、事前にメンバーに対して当日の「議題」「目的」を知らせ、事前にいくつかのアイデアを考えておいてもらうことです。そうすることでメンバーはあらかじめ与えられた課題について考えてから会議に参加するのでアイデア出しがスムースになります。
もう一つは、「偉い人」が参加した時の注意です。「偉い人」がいるとメンバーが委縮して発言が抑制される事態がしばしば起こります。集めるメンバーにあまり上下関係がない方が好ましいのですが、もし「偉い人」が参加する場合には「○○部長」とか「○○課長」とか肩書で呼ばず、あえて
「○○さん」と出来るだけ上下感覚が出ないように進めることも要注意です。
次に、ブレストで出されたアイデアの整理とまとめ方についてお話しします。
ブレストに先立って、出来るだけ大きなホワイトボードを用意し、メンバーには大きめのポストイットとサインペンのような太めの筆記具を配布しましょう。ポストイットは、アイデアの書きこみ用に1色、後の作業用に2~3色用意します。アイデアの書きこみ用は足りなくならないように十分な枚数を準備します。
そして、メンバーはアイデアを出すときには「声に出して」メンバー全員に伝え、ポストイットに書き込み、ホワイトボードに貼り付けます。(ファシリテーターが貼ってもいいのですが、発言者が動くことでブレストにも活気が出ます。)1つのアイデアを1枚のポストイットに簡潔に書き込みます。
アイデア出しにトータルの時間の1/2程度を使い、1/2は次に述べるまとめに使います。活発な議論が行われ、アイデア出しに時間をかけた場合には、時間をあまりあけずに次の機会を設定しましょう。
出された数多くのアイデアをまとめるために「親和図法」を利用します。親和図法はKJ法ともいいます。
親和図法とは、情報をグループ分けして意味を「可視化」する作業です。数多く出されたアイデアをそれぞれの情報の「意味の近さ・なじみ(親和性)」を見つけてグループにまとめて行きます。
ランダムに出され、一見しただけでは関係性が分かりにくいアイデアや情報も親和性の観点からグルーピングし統合して行くことで、それまで気づいていなかった問題や傾向、思考の枠組みなどが見えてきます。
具体的には・・・
1. ホワイトボードに貼り付けられた一つ一つのアイデア(ポストイット)について、メンバーで議論しながら親和性を見つけて近いアイデアをグループ化します。
2. 議論を繰り返して、出されたアイデアすべてをいくつかのグループにまとめます。
3. グループ化できないアイデア(一匹狼)は、無理にグループ化せずそのままにしておきます。
4. 見つけ出したグループを線で囲むなどしてまとめ、グループにどんな親和性があったのか連想できる名前をつけます。(グループラベル)その名前を違う色のポストイットに書き込み上部に貼り付けます。
5. 作られたグループ間の関係性(因果関係、対立、並列など)を議論して線でむすび、線に関係性を補記します。
6. 時間の許す限り、グルーピング過程を振り返り全体を俯瞰します。
7. 最後に、上記のプロセスから得た「コト」を文章にまとめます。
親和図法(KJ法)の実例が下記のサイトで参照できますので、特に文章にまとめる部分などの参考にしてください。
株式会社セブンデックス
KJ法をやってみた|具体例を用いてやり方とコツをわかりやすく紹介
https://sevendex.com/post/6543/
親和図法の良い点は主に2点あります。
1. グルーピングの議論を通じてメンバーの合意形成がなされること。
グルーピングは論理的なものと直感的なものがあり、論理的グルーピングではメンバーの認識をすり合わせることで合意を形成します。直感的なグルーピングではいろいろな議論をぶつけ合うことで、メンバー間で新しい着眼点を見出します。
2. 親和図全体を俯瞰する過程で新しい「気づき」や「洞察」が得られる。
バラバラにアイデアを出しただけでは、人間の頭の中の情報は未整理のままで意識の奥に眠っていますが、親和図法のプロセスを踏むことで頭の中の情報が整理・体系化され、新たな視点や発想の切り口を見つけることができます。