まず考えないといけないことは「ビジネス(業務)のスピード」です。
スピードとは・・・
1.
顧客への納期を短くする
納品まで、あなたは何日待てますか?
同じ商品を購入するときにあなたは納期の短い調達先に注文しませんか?
アマゾンを思い出してください。アマゾンが来るまで注文した品物が「翌日」に届くなんて誰が想像したでしょうか?筆者も含めて、みんながアマゾンに注文しています。
2.
見積り期間を短くする
見積りを取った時に、あなたは何日待てますか?
3.
労働時間を短くする
あなたは、同じ仕事をしている社員が1人は定時に帰り、他の1人が残業していたら、どう評価しますか?残業代を払うのは嬉しいですか?
4.
生産リードタイムを短くする
あなたは、同じ量の製品を作るのにリードタイムは短いほど嬉しくありませんか?
5. あなたはスーパーのレジに並ぶ時間が短いほど嬉しくありませんか?
6. あなたは、あなたのスーパーでレジの回転率が高くなり、顧客クレームが減ったら嬉しくありませんか?
7. あなたは、システム開発の期間が半分になったら嬉しくありませんか?
8. あなたは、「探し物」の時間は勿体なくありませんか?
上記の質問を読んだ皆さんは「早いほど嬉しい」と感じたと思います。
では、あなたの会社では、仕事のスピードを気にしていますか?
今のスピードを改善するためにどんな努力をしていますか?
それは「科学的」な手法によるものですか?
今の世の中は、何事も変化が速くなりました。
今、目の前にある「商機」も一瞬気を抜いた間に消えてしまう世の中になっています。
ビジネスには誰にも負けない「スピード」が求められています。
ビジネスプロセス・マネジメント(又は、ビジネスアナリシス)は、あなたのビジネスをスピードアップさせるためにあるのです。
ここ数年「Business Agility」(ビジネス・アジリティ)と言う言葉が広まっています。直訳すると「ビジネスの俊敏性」となりますが、書籍「Business Agility」の著者山本政樹氏の定義では「事業構造を外部の環境変化に対して素早く適応させると同時に、自ら変化を生み出すことを可能にする組織能力」とされています。
また、山本氏は「スピード」と「アジリティ」は意味が異なり、スピードはカーレースで言うとこのF1「舗装された道路をとにかく速く走る」で、アジリティは「一般道を状況の変化を見極めて走る」ラリーカーだとおっしゃっていますが、私は、あまりこだわらず「何でも素早くこなすこと」と理解しています。
日本の製造業の現場の生産性の水準は世界のトップクラスです。そこでは、5S活動に始まりトヨタ方式に至る「カイゼン」の歴史があります。
しかし、日本の労働生産性は、主要先進国(G7)中で最下位 、OECD加盟国の36カ国中21位― それが日本の現状です。
どうしてそうなってしまったのでしょう?一時期は「Japan as Number One」と言われた国がです。
ある経営者とお話ししたら「わが社ではビジネスプロセス・マネジメントはいらない。現在、上手く行っているし、業績も安定しているから。」と言われました。
また、別の方からは「ビジネスプロセス・マネジメントって、所詮は見える化でしょ。見える化にお金を使ってもね。」と言われました。
確かに、「高いお金を払ってコンサルタントを入れて見える化したけれど、書類が書庫でほこりをかぶっているよ。」と言う話しもよく聞きました。
しかし、これら話しは短絡的で戦略性に欠けています。
上で申し上げた「とにかく速くするんだ」という時代の要請に対応していません。
「早く」ではなく「速く」です。
工場では工具などの物の置き場所に番地がついています。これを定位置管理と言いますが、目的は
「探す時間をゼロにすること」です。
日本でのシステム開発のハウツー本には、必ず「現状(AsIs)調査」から始めると書いてあります。この現状調査とは「今の自分の会社の状況を探すことから始める」ことを意味しています。工場ではスパナ1本手に取る時間を惜しみながら、工場の外に出るとどうして「探すこと」に無頓着なのでしょうか?
この問題を解決する活動が「ビジネスプロセス・マネジメント」(あるいは、ビジネスアナリシス)です。日本語に訳すと「業務工程管理」となりますが、私は「業務工程の継続的最適化活動」と訳しています。
ビジネスプロセス・マネジメントは所詮「見える化」だと聞いたと上に書きましたが、これはビジネスプロセス・マネジメントの一面しか見えていません。「見える化」とは工具の格納場所を見つける行為です。見つけた後は、必ずそこに格納しないといけません。一旦、見つけた場所でももっと便利な場所が見つかれば、そちらに変更します。この、もっと便利な場所を見つけて格納場所を変更し、そこに格納を続けるように計らうのがビジネスプロセス・マネジメントの基本です。
しかし、いざビジネスプロセス・マネジメントを始めて見える化することには時間、コスト、ヒトが掛かります。故に、しっかりとした将来的戦略を持って継続的に実施しないと成果物がほこりをかぶるという事態に陥ってしまいます。
しかし、将来の生産性を上げるために・・・つまり、3人かかっている仕事を2人で、3時間かかっている仕事を2時間で、顧客にどこよりも速く、コストは最小で・・・という努力は今日から始めないといつか負け組になってしまいます。
勿論、現代ではその為に「システム」は欠かせませんが・・・
ところで、御社では社員は本当に仕事を「理解」していますか?と、言うのは・・・この30年くらいで日本は初期のシステム化を進め、業務の多くがシステムの中のソフトウェアに置き換わりました。その結果、仕事の根本を知らなくてもコンピュータの操作さえ知っていれば良い時代になっています。それ故に、一旦、トラブルに陥ると業務が滞ってしまうと言うことも起こります。
また、古参の社員で生き字引のような社員に特定の業務を任せきりにしていませんか?その社員が突然辞めたら、その穴はすぐに埋まりますか?
アメリカなどでは労働者の流動性が高く、ある日突然「今日で退職します。」と言うことが起こります。日本でも転職サイトのコマーシャルが増えていますが、徐々に労働者の流動性が上がっていますし、より大きな問題として人口の減少、労働力の減少は必ず起きることが分かっています。その波に御社は対応できますか?
ビジネスプロセス・マネジメントにおける「見える化」とは、社内の誰が、どこで、何をしているかそしてどのようにシステムを使っているかを明らかにした上で共有し、①組織の効率を上げる、②経営環境の変化を含めた不測の事態に対処できるようにする能力を追求する「初めの一歩」なのです。
でも、コスト、時間、ヒトが負担だよね・・・って、聞こえて来ます。
成長著しい株式会社 MonotaRoは、書籍「Business Agility」山本政樹著のなかで下記のように紹介されています。
工具などの間接資材の通信販売を扱う株式会社 MonotaRoでは数年の時間をかけて、各部門のリーダー (=プロセスオーナー )が自身の担当するプロセスを可視化する取り組みを進めました。それぞれが書き出したプロセスは、部門を横断した E n d T o E n dの状態につなげて休憩室の壁に貼り出され、経営から現場リーダーが一堂に会したプロセスの学習と問題発見のセッションを行っています。例えば「受注〜発送〜請求」の注文処理の流れでは、このプロセスを担当するカスタマーサービス部門、物流部門、請求処理を担当する管理部の担当者が集まり、担当業務の手順や目標、 K P I、そして現状の課題について順番に説明し、他の参加者と議論をします。これは E n d T o E n dのビジネスプロセスを共有するコミューーティ形成の活動の一つの例だと言えます。
また、「中小企業IT経営力大賞」(経産省、2012)、「つながるものづくりアワード2016」(IVI、2016)、「地域未来牽引企業」(経産省、2018)といった多くの賞を受賞し、2018年度「ものづくり白書」では中小製造業におけるIT活用の先進事例として紹介された今野製作所の事例が以下のサイトで紹介されています。今野製作所はリーマンショックで存続の危機に瀕しましたが、ビジネスプロセス・マネジメントを梃子にして復活を果たし業績を伸ばした好事例です。
今野製作所に学ぶ、ヒトとヒトをつなぐデジタル活用
https://iotnews.jp/archives/115479
ビジネスプロセス・マネジメントは、決して難しい内容ではありませんし、一気にやる必要もありません。ただ、息長く確実に続ける必要があります。その為にも経営者のリーダーシップが何より重要です。ぜひ、御社もビジネスプロセス・マネジメントに一歩踏み出してください。