BPM(Business Process Management)の重要性を筆者は訴えている訳ですが、今回はちょっと逆説的な話題から始めたいと思います。
価値ある「改革」とは・・・
シカゴを拠点とする国際的な経営コンサルティング会社であるStrategosの創設者ゲイリー・ハメルは、その著書(共著)The Future of Managementのなかで(企業の)イノベーションには4階層があると言っています。それらは以下の4つです。
1. Management Innovation : 経営革新
2. Strategic Innovation : 戦略革新
3. Product / Service Innovation:製品/サービス革新
4. Operational Innovation :オペレーション革新
彼によると・・・
「イノベーションにはさまざまな種類があります。 運用の革新、製品の革新、戦略の革新、そしてもちろん、管理の革新。 ジャンルごとに成功への貢献はありますが、これらのさまざまな形のイノベーションを階層に並べると、階層が高いほど価値創造と競争力のある防御力が高くなり、経営革新が最優先されます。」と言うことで「経営革新」が最重要で競合に追いつかれにくいと言っています。
また、筆者がBPMで採り上げようとしているオペレーション革新については最下位に位置づけています。理由は・・・
「第一に、運用上の卓越性は、多くの場合、企業のITインフラストラクチャの品質に大きく依存します。 残念ながら、ハードウェアとソフトウェアの進歩は急速に拡散する傾向があり、ITベースの有利性を守るのは困難です。
第二に、今日の多くの企業は、幅広い事業活動をサードパーティにアウトソーシングしています。ベンダーは、単一の業界内の複数の企業にサービスを提供することが多く、通常、単一の顧客が卓越した優位性を築くのを支援するインセンティブを欠いています。 アウトソーシングとオフショアリングは、企業が競争に勝ち残るのに役立ちますが、独自の重要な利点を生み出すことはめったにありません。
最後に、超一流の企業から一般的な企業に業務のベストプラクティスを移行するために多くのコンサルタントが活動しており、このことも、オペレーションの優越性を平均化します。」
という訳でオペレーションの革新は・・・
1. 誰もがシステム(IT)を使って業務を革新できること
2. アウトソーシングとオフショアリングでは優越性は望めないこと
3. トヨタ方式のような先進のオペレーション手法も、多くのコンサルタントが広めていること
により、一旦「優越性」を築いてもすぐに追いつかれる・・・と言っています。
しかし、このことはオペレーション革新を蔑ろにして良いという意味にはなりません。GAFAMを見れば自ずから分かると思います。彼らは他の追随を許さないスピードで経営、戦略、製品/サービスそしてITとオペレーションを革新し続けています。これからの時代、特にITとオペレーション(業務プロセス)の革新に取り組まないと取り残される一方になってしまうのです。
日本の労働生産性は、主要先進国(G7)中で最下位 、OECD加盟国の36カ国中21位です。この現実をしっかり認識する必要があります。
ところで、話しは変わりますが・・・
皆さんの会社では「経営方針」や「経営戦略」が社内に周知・徹底されていますか?
ビジネスプロセス・マネジメントにおいて「戦略実行における空白地帯」(The strategy execution void)という考え方があります。その意味するところは、経営戦略と業務プロセスの整合性が図られておらず、また社員の多くが経営方針や経営戦略を認識せずに毎日の業務を行っているために、経営と現場の間に空白地帯が存在してしまっている・・・と言うことです。
サッカーに例えるならば、選手一人ひとりが「自分のポジションを理解していない」「自分の役割を理解していない」「監督の作戦を理解していない」状態で試合をしているようなものです。
この空白地帯を埋めるためには「効果的な経営」と「効率的な業務運営」が必要になります。
また、業務プロセスが効率的に「見える化」され、管理職や一般社員に共有されており、業務運営環境が最適化されている状態であれば、組織運営、ガバナンス、オペレーションそしてIT活用等がスムースに行われる環境が出来上がります。
こうした環境を自社内に構築するためにビジネスプロセス・マネジメントはあるのです。
最後に、「経営戦略」とビジネスプロセス・マネジメントですが・・・
経営戦略を展開する上で、考えなければならないことが「ボトルネック・プロセス」です。
戦略の展開に当たって、その実行の妨げとなる(なりそうな)業務プロセスは、戦略展開に先立って解消しておくことが必要です。上記の「戦略実行における空白地帯」が存在している環境では、尚更ボトルネック・プロセスの発見と戦略展開が困難になります。その為にもビジネスプロセス・マネジメントは重要な活動になります。
ボトルネック・プロセスの解消に成功し、事業を発展させた今野製作所様をご紹介します。
(以前のブログでもご紹介しましたが・・・)
今野製作所様は、「中小企業IT経営力大賞」(経産省、2012)、「つながるものづくりアワード2016」(IVI、2016)、「地域未来牽引企業」(経産省、2018)といった多くの賞を受賞し、2018年度「ものづくり白書」では中小製造業におけるIT活用の先進事例として紹介されました。
今野製作所様では、リーマンショック後、経営戦略として特注品市場へ新規事業に進出しましたが、業務プロセスは従来品の生産方式を変更していなかったため、ボトルネック・プロセスが解消されておらず、納期遅れをはじめとする大きな混乱に陥りました。しかし、その苦境にあってビジネスプロセス・マネジメントを取り入れ、業務プロセスの見える化、社内体制の最適化、ITの効率的な導入を果たし、業績を回復させることに成功されました。是非、下記の記事を読んで戴きたいと思います。
今野製作所に学ぶ、ヒトとヒトをつなぐデジタル活用